
この記事の執筆者:渡邉 里沙 ピラティススタジオBB 仙台泉 | PHI Pilates インストラクター
この記事でわかること💡
・MP関節を中心に行うバードオンパーチのねらい。骨間筋や虫様筋が活動しやすい環境をつくることと、インストラクターがMP関節の屈曲をサポートする意味
・リスフラン関節を中心に行うバードオンパーチのねらい。足部全体のしなやかさと、足背周囲の組織が働きやすい環境をつくること
・2つのアプローチの相違点と共通点。現場での使い分けと、それぞれで観察したいポイント
足は、立つ・歩くという毎日の動作を一番下で支えている部位です。26個の骨と、それを結ぶ多くの関節・筋肉が、地面からの情報を受け取りながら姿勢を支えています。それだけに、足部の使い方が変わるとその上にある膝や股関節、骨盤の動き方まで変わってきます。
2026年8月27日(木)、オンラインセミナー「足部へのアプローチ Part 1 ― バードオンパーチから学ぶ、足部の機能解剖と実践」が開催されました。

講師を務めたのは、小田島政樹・大岩俊貴・田沢優の3名です。
開催概要と講師紹介
| セミナー名 | 足部へのアプローチ Part 1 バードオンパーチから学ぶ、足部の機能解剖と実践 |
| 開催日時 | 2026年8月27日(木)21:00〜22:00 |
| 開催形式 | Zoomによるオンライン開催 |
| 講師 | ・小田島 政樹 ・大岩 俊貴 ・田沢 優 |
小田島 政樹(Masaki Odajima)DTSピラティス/大阪 代表
柔道整復師。トレーナー歴20年以上。プロ野球、Jリーグ、JRA、オリンピアンなど多方面のトップアスリートをサポート。身体の連動性を重視した運動療法に定評があります。
大岩 俊貴(Toshiki Oiwa) マスターピースボディルーム/名古屋 代表
鍼灸あん摩マッサージ指圧師。ピラティストレーナー歴18年。日本代表アスリート、WBC監督 井端弘和氏をはじめ、メジャーリーガー、プロゴルファーなど数多くのトップアスリートをサポート。プロ野球においては、特に足から肩への運動連鎖を考慮したピッチャー指導に定評があります。
田沢 優(Yutaka Tazawa)ピラティススタジオBB 代表
東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、2013年にPMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。オリンピック選手からパラアスリート、頸髄損傷者まで幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名を超えます。
今回は3名の講師がそろって登壇しました。機能解剖学の視点で「足部で何が起きているのか」を整理しながら、実際にどう動かし、どう指導に落とし込むのかを実技とあわせて解説していく構成です。理論だけ、実技だけに偏らない、その場で体感しながら理解を進められる1時間となりました。
バードオンパーチという名前が示すもの
今回のテーマとなったバードオンパーチは、鳥が止まり木に止まっている姿から名づけられたエクササイズです。

丸いフットバーに足底を沿わせるという設定が特徴で、平らな床の上とは条件が異なります。足底のどこがバーに触れているのか、どの方向へ圧が加わっているのかが感じ取りやすくなり、足趾や足部を「どう動かしているか」を確認しながら進めやすくなります。
この「接触情報を手がかりに動かす」という点は、足部を一つのシステムとして捉えるフットコアの考え方とも重なります。基本的な枠組みについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
フットコアとピラティス|足部を「鍛える」だけでなく、支える・感じる・動かす仕組みとして捉える
同じエクササイズでも、当てる位置で目的が変わる
セミナーの中で繰り返し取り上げられたのが、バーを足部のどこに当てるかという視点です。
足部は前後に長く、複数の関節が連なった構造をしています。そのため、バーという支点をどこに置くかによって、主に動く関節も、活動しやすくなる筋群も変わってきます。
今回扱われたのは、次の2つの位置です。
- MP関節(中足趾節関節)を中心に行う場合
- リスフラン関節(足根中足関節)を中心に行う場合

どちらが正しい・優れているという話ではなく、何をねらってその位置を選ぶのかを整理しておくことが大切だと解説されました。
MP関節を中心に行う場合|内在筋が活動しやすい環境をつくる
MP関節は、中足骨頭と基節骨の間にある関節です。足趾のつけ根にあたり、いわゆる「足指の関節」として意識しやすい部分でもあります。
この位置にバーを当てると、中足骨頭が支点となり、足趾がバーの丸みに沿って屈曲していく動きが引き出されます。
このときのねらいの一つが、足部内在筋、とくに骨間筋や虫様筋が活動しやすい環境をつくることです。
骨間筋や虫様筋は、MP関節を屈曲させながら、その先のIP関節(趾節間関節)は伸ばした状態を保つという働きを担っています。足趾の先端だけを強く丸め込む動きとは異なり、つけ根から動かしながら足趾の長さを保つ、という感覚が手がかりになります。
なお、趾の運動には短趾屈筋や長趾屈筋なども協調して働いています。内在筋だけが単独で動きをつくっているわけではありません。
インストラクターがMP関節の屈曲をサポートする理由
バードオンパーチは、ご自身の感覚だけで進めると、指先で握り込む動きに置き換わりやすいエクササイズでもあります。
そこで、インストラクターがMP関節の屈曲をサポートするという関わり方が有効になります。つけ根から曲がる方向を手で示すことで、骨間筋や虫様筋が活動しやすい環境をつくることも、指導上の目的の一つです。
観察したいポイント
- 指先だけで握り込んでいないか
- 母趾側・小趾側のどちらかに偏っていないか
- 下腿や大腿に力みが出ていないか
握り込む動きが強く出る場合は、長趾屈筋などの外在筋が優位になっている可能性があります。まずはバーとの接触位置を確認し、動かす量を小さくするところから始めると整理しやすくなります。
リスフラン関節を中心に行う場合|足部全体のしなやかさと足背周囲
リスフラン関節は、楔状骨や立方骨と中足骨底の間にある関節です。前足部と中足部の境目にあたり、外からは分かりにくい位置にあります。
この位置にバーを当てると、支点が後方へ移り、前足部全体がバーの丸みに沿って回り込むような動きになります。
このときのねらいの一つが、足部全体のしなやかさ、そして足背周囲の組織が働きやすい環境をつくることです。
足背側には、長趾伸筋や短趾伸筋の腱、伸筋支帯、足背の筋膜などが層をなして通っています。日常生活では靴に覆われている時間が長く、足背側を意識的に使う機会は多くありません。バーの曲面に前足部を沿わせる設定は、この領域へ働きかけやすい環境と言えます。
観察したいポイント
- 横アーチを保ったままバーに沿えているか
- 足趾だけで代償していないか
- 回内・回外のどちらかへ偏っていないか
参加者からのご質問
ここまでは、バーを当てる位置によって何が変わるかを整理してきました。ただ、実際のセッションでは「では、どこまで手を出すのか」「やった結果をどう見るのか」という次の判断が必要になります。
セミナー終了後に寄せられたご質問には、まさにその視点が共通していました。学んだことを持ち帰って、明日のセッションでどう使うか。代表的な2つを、講師からの回答とあわせてご紹介します。

Q1.手で押さえるのは必須ですか
バードオンパーチで足背をストレッチする際、インストラクターが手で押さえておくのは必須でしょうか。動画を拝見すると、セルフで行っているバードオンパーチではそうしていなかったので気になりました。

股関節・膝関節の伸展と屈曲を繰り返している際に、足趾(とくにMP関節)の屈曲が維持できていない場合には、手で押さえて行っています。
必須ではありません。ただし、MP関節を中心とした足趾の屈曲をうまく引き出せる方は多くないこと、またストレッチ感を出したいことから、現場では押さえるケースが多くなります。
一方で、エクササイズ前後の体感を確かめていただくために、あえて手でのサポートをせずに実施することもあります。

Q2.エクササイズの前後で何を確認しますか
動画で紹介されているバードオンパーチを行う際、前後の評価や判定は何かありますか。

立位での床と足底の接地や、ディープスクワット時に浮き指になっていないかどうかで確認する場合が多くあります。
あわせて、次のような確認の仕方もあります。
- そもそもフットワークでバーを押しやすいかどうか
- 会員様側:ショルダーブリッジのときに、床を押している感覚が普段より感じられるか
- インストラクター側:足部や下肢の代償動作が減っているか、普段より少ないか
2つの回答に共通しているのは、あらかじめ決まった手順があるわけではない、という点です。手でサポートするかどうかも、前後に何を確認するかも、目の前の方の足部で何が起きているかによって変わります。
だからこそ、バーを当てる位置によって何が変わるのかを知っておくことが、その場での判断材料になります。ただし、MP関節とリスフラン関節は、きれいに切り分けられるものでもありません。
まとめ
ここまで2つの位置を分けて説明してきましたが、実際にはどちらの方法でも、足趾を屈曲させる筋群と、足部を支える筋群は協調して働いています。
MP関節からのアプローチであっても、足背部は動きやすくなります。逆に、リスフラン関節からのアプローチであっても、足趾のコントロールは関与します。つまり、「MP関節=内在筋」「リスフラン関節=足背」と一対一で割り切れるものではありません。
セミナーでは相違点に焦点が当てられましたが、実際の現場では、相違点を理解したうえで、共通して働いている部分も含めて観察する。という視点を持っておくことが大切だと共有されました。

- MP関節を中心に行う場合は、骨間筋や虫様筋といった内在筋が活動しやすい環境をつくることが、ねらいの一つになります
- リスフラン関節を中心に行う場合は、足部全体のしなやかさや、足背周囲の組織が働きやすい環境をつくることが、ねらいの一つになります
- ただし、趾の運動には短趾屈筋や長趾屈筋なども協調して働いており、相違点と共通点の両方を理解しておくことが大切です
同じエクササイズ名でも、設定を少し変えるだけで引き出される要素は変わります。
何のエクササイズを行うかだけではなく、そのエクササイズで何を感じ、何を動かしたいのか。
この視点を持つことで、足部へのアプローチをより立体的に組み立てられるようになります。

足部は、日々のセッションで必ず触れる部位です。だからこそ、当たり前に行っているエクササイズの設定を一度立ち止まって見直すことが、指導の幅を広げてくれます。
「このエクササイズで、何を感じてもらいたいのか」。その問いを持ちながら、これからも足部へのアプローチを組み立てていきたいと思います。
渡邉 里沙(Risa Watanabe)
PHI Pilates インストラクター。
幼い頃からバレエやジャズダンスなどに触れ、舞台表現の指導にも携わる。
自身の表現をより良いものにしたいとトレーニング方法を模索していたところ、マシンピラティスに出会う。