フットコアとピラティス足部を「鍛える」だけでなく、支える・感じる・動かす仕組みとして捉える

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フットコアシステムとは?

足部へのアプローチというと、扁平足やハイアーチなどの「形」、あるいは足趾や足裏の「筋力」に注目しがちです。しかし、足部は一つの筋肉だけで支えられているわけではありません。

骨や靱帯による構造、筋による運動、足底から得られる感覚情報が協調しながら、荷重に応じて形を変え、必要な場面では剛性を高めています。

この足部の働きを整理する枠組みが、フットコアシステムです。

McKeonらは、体幹コアと足部内在筋の類似性に着目し、足部を一つの統合されたシステムとして捉える考え方を提示しました。論文は2014年3月にオンライン公開され、2015年に『British Journal of Sports Medicine』の正式な巻号へ掲載されています。

フットコアは特定のエクササイズ名ではありません。

足部をどのように評価し、どの機能へアプローチするかを整理するための考え方と捉える

と分かりやすくなります。


体幹コアと足部は似た考え方で整理できる

体幹コアも、腹筋を強く収縮させることだけを意味するものではありません。

脊柱や関節、靱帯などの構造、体幹筋群による能動的な制御、固有感覚などの神経的な調整が協調することで、姿勢や運動に必要な安定性がつくられます。

足部も同様に、次の3つのサブシステムで整理できます。

受動的サブシステム

骨、関節、靱帯、関節包、足底腱膜など、足部の基本的な形と支持をつくる構造です。

これらは荷重を受け止め、アーチの変形や弾性エネルギーの蓄積・放出に関与します。ただし、理想的な一つの形に足を固定することが目的ではありません。

能動的サブシステム

足部内在筋と、下腿から足部へつながる外在筋によって構成されます。

筋活動によってアーチの変形量や足部の剛性を調整し、足趾運動、荷重応答、歩行や蹴り出しを支えます。足底の内在筋は、荷重が増えると活動を高め、縦アーチの変形に対抗する能力を持つことが実験的に示されています。

神経的サブシステム

足底の触圧覚、関節位置覚、固有感覚などの情報を受け取り、状況に応じて筋活動を調整するシステムです。

足底は単なる接地面ではなく、身体と床面の状態を認識する感覚器として、姿勢制御や運動調整に関わります。

つまり足部では、

構造が支え、筋が動かし、感覚情報がその働きを調整する

という3者の協調が重要です。


足部内在筋と外在筋を分けて考える

能動的サブシステムは、さらに足部内在筋足部外在筋に分けると、エクササイズの目的が整理しやすくなります。

足部内在筋

筋腹が足部内にあり、足の中で起始・停止する筋群です。

代表例として、

  • 母趾外転筋
  • 小趾外転筋
  • 短趾屈筋
  • 虫様筋
  • 骨間筋
  • 足底方形筋 

などがあります。

足趾の位置、MP関節の動き、アーチの微細な変形を調整する役割を担います。

足部外在筋

筋腹が下腿にあり、長い腱が足部へつながる筋群です。

代表例として、

  • 長趾屈筋
  • 長母趾屈筋
  • 長趾伸筋
  • 前脛骨筋
  • 後脛骨筋
  • 長腓骨筋
  • 短腓骨筋

などがあります。

足関節や足趾へ比較的大きな力を伝え、荷重、推進、方向転換などを支えます。

ただし、内在筋を「良い筋肉」、外在筋を「悪い筋肉」と分けるものではありません。

内在筋による細かな調整と、外在筋による力の発揮が、適切に協調すること

が重要です。

足部内在筋トレーニングを検討したシステマティックレビューでは、足部アライメント、バランス、筋力、自己評価による機能障害などに改善が認められました。

一方、痛みに対しては対照群より明確に優れているとは示されておらず、「内在筋を鍛えればすべて解決する」という単純な理解は避ける必要があります。


フットコアの考え方がピラティスと相性の良い理由

ピラティススタジオBB田町のスタジオ内観。多彩なマシン(アレグロ2リフォーマー、トラピーズテーブル、コンボチェアー、コアアライン)を完備した設備写真

ピラティスでは、一つの筋肉を単独で強化するだけでなく、呼吸、アライメント、感覚入力、負荷、全身のつながりを組み合わせながら動きを再学習していきます。

この考え方は、フットコアシステムとよく重なります。

例えばリフォーマーのフットワークは、単に脚でキャリッジを押す運動ではありません。

インストラクターは、足部だけでも次のような要素を観察できます。

  • 踵骨や後足部の位置
  • 距腿関節・距骨下関節の動き
  • 母趾球、小趾球、踵への圧分布
  • アーチが荷重に応じて変形できるか
  • 足趾を過度に反らしたり、握り込んだりしていないか
  • 足部と膝、股関節、骨盤が連動しているか

フットワークは、足部の形を固定するのではなく、荷重の中で受動的・能動的・神経的サブシステムの協調を確認する機会になります。


バードオンパーチで「感じる」と「動かす」をつなぐ

バードオンパーチでは、足底をフットバーの丸い面へ沿わせます。

平らな床とは異なり、足底のどこがバーに触れているか、どの方向へ圧が加わっているかが分かりやすくなります。

その接触情報を手がかりに、

  • MP関節から足趾を動かす
  • 指先だけの握り込みを減らす
  • 足部内在筋と外在筋を協調させる
  • 足背や前足部をバーの形へ適応させる
  • 足趾だけでなく足部アーチ全体をコントロールする

といった練習へつなげられます。

フットコアの分類では、特に能動的サブシステムと神経的サブシステムへ同時に働きかけやすいエクササイズと捉えられます。

同時に、バーの形へ足部を沿わせることで、足趾・足背・足底組織にも機械的な刺激が加わるため、受動的サブシステムとの関係も無視できません。


フットコレクターを現代のフットコアから捉え直す

バランスドボディ社製のフットコレクターの写真

現在フットコレクターとして知られる器具は、ジョセフ・ピラティスが1922年にドイツで出願し、1923年に成立した最初の登録特許とされています。

もちろん、ジョセフ・ピラティスが現代のフットコア理論を知っていたわけではありません。しかし、現代の機能解剖学から見直すと、フットコレクターの構造には興味深い特徴があります。

  • 曲面に足底を接触させる
  • バネの抵抗方向を感じる
  • 踵や前足部を土台として足趾を動かす
  • 足趾、MP関節、アーチを協調させる
  • 押す力と戻る力を調整する

つまり、足部を単純に筋力強化するのではなく、

足底で感じながら、足趾・前足部・アーチを自らコントロールする

環境がつくられています。

フットコレクターやバードオンパーチを、フットコアシステムを直接検証した臨床試験は限られています。そのため、「3つのサブシステムを改善すると証明された」と断定することはできません。

一方で、器具の形状、接触刺激、抵抗、足趾運動という特徴を、フットコア理論に照らして整理することには、教育的・臨床的な意味があります。

フットコレクターには現在も公式の使用ガイドが用意され、足趾や前足部をさまざまな位置で用いるエクササイズが紹介されています。


「扁平足だからアーチを上げる」で終わらせない

フットコアの考え方で重要なのは、見た目だけでエクササイズを決めないことです。

扁平足であっても、荷重に応じて柔軟に変形し、必要な場面で剛性を高められる足もあります。

反対に、ハイアーチで見た目のアーチが高くても、衝撃吸収や足底感覚、足趾のコントロールが不十分な場合があります。

したがって、セッションでは次の順番で確認すると整理しやすくなります。

1.形を見る

アーチの高さ、踵骨、前足部、足趾の位置を観察します。

2.動かしてみる

回内・回外、足関節背屈、MP関節、足趾の分離運動などを確認します。

3.荷重してみる

立位、フットワーク、ヒールレイズ、片脚支持でどのように変化するかを見ます。

4.感覚を確認する

踵、母趾球、小趾球、足底のどこを感じられているかを確認します。

5.エクササイズ後に再評価する

見た目だけでなく、接地感、動きやすさ、荷重時の安定性がどう変化したかを確認します。


まとめ

フットコアシステムは、足部を新しい理想形へ矯正する考え方ではありません。また、足部内在筋だけを鍛える方法でもありません。

  • 骨・靱帯・足底腱膜などの受動的サブシステム
  • 内在筋・外在筋による能動的サブシステム
  • 足底感覚や固有感覚を含む神経的サブシステム

この3つが、どのように協調しているかを考えるための枠組みです。

ピラティスのフットワーク、バードオンパーチ、フットコレクターも、この視点で見直すと、単なる「足の筋トレ」ではなくなります。

何のエクササイズを行うかだけではなく、そのエクササイズで何を感じ、何を支え、何を動かしたいのか。

フットコアという共通言語を持つことで、これまでの足部アプローチを、より立体的に整理できるようになります。


参考文献  

1.McKeon PO, Hertel J, Bramble D, Davis I. The foot core system: a new paradigm for understanding intrinsic foot muscle function. Br J Sports Med. 2015;49(5):290. Online published 2014.

2.Kelly LA, Cresswell AG, Racinais S, Whiteley R, Lichtwark G. Intrinsic foot muscles have the capacity to control deformation of the longitudinal arch. J R Soc Interface. 2014;11:20131188.

3.McKeon PO, Fourchet F. Freeing the foot: integrating the foot core system into rehabilitation for lower extremity injuries. Clin Sports Med. 2015;34(2):347–361.

4.Jaffri AH, Koldenhoven R, Saliba S, Hertel J. Evidence for intrinsic foot muscle training in improving foot function: a systematic review and meta-analysis. J Athl Train. 2023;58(11–12):941–951.

5.Viseux FJF. The sensory role of the sole of the foot: review and update on clinical perspectives. Neurophysiol Clin. 2020.


この記事の執筆者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)

東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文光堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。

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