スウェイバック姿勢とは?語源と意味
「スウェイバック(Sway Back)」は英語で
- Sway:揺れる、たわむ、傾く
- Back:背中、後方
を意味します。
もともとは馬やラクダなど動物の背中が下にたわんだ状態を指す言葉で、人間の姿勢分析にも転用されました。

直訳すると「背中がたわんだ姿勢」ですが、臨床や運動指導の分野では骨盤が前に突き出し、上半身が後方へ傾く姿勢を表します。
ケンダルの姿勢分類との関連
スウェイバック姿勢は、アメリカの理学療法士フローレンス・P・ケンダルらが提唱した**「姿勢分類(Postural Types)」**の代表例のひとつです。

ケンダルの分類は、1949年出版の『Manual Muscle Testing』に初めて掲載され、その後も改訂を重ねて世界中で広く使われています。

この分類は、完璧な姿勢評価法ではないものの、臨床現場やトレーニング指導で使いやすく、短時間で傾向を把握できるのが特徴です。
現在では、国際ピラティス資格である**👉NPCP(National Pilates Certified Program)**のテキストにもケンダルの姿勢例が掲載され、ピラティス業界でも標準的な評価軸のひとつとして認知されています。
スウェイバック姿勢の特徴
現代人にもっとも多い不良姿勢で、骨盤が前方に突き出し、胸郭(肩甲骨付近の肋骨や背骨)が後方に変位し、その代償として頭部が前に出ます。

よく見られる身体的特徴
この筋バランスの崩れは、日常生活だけでなくスポーツパフォーマンスにも悪影響を与えます。
- 下半身:反張膝、ハムストリングスの短縮
- 体幹部:外腹斜筋の過伸張、内腹斜筋の短縮
- 見た目:ぽっこりお腹、背中の丸まり

外腹斜筋が引き伸ばされた状態になると、腹部前面の張りが失われ、骨盤と胸郭の安定性が低下します。逆に、内腹斜筋が短く硬くなることで体幹の回旋や側屈が制限され、パフォーマンスにも悪影響を与えます。
スウェイバック姿勢の座り方の特徴
スウェイバック姿勢の人は、立位だけでなく座位の癖にも特徴があります。デスクワーク中やリラックス時に以下のような座り方をしている場合、スウェイバック傾向が強い可能性があります。

- 椅子の背もたれに深く寄りかかり、上半身が後ろに倒れている
- 骨盤が後傾しつつ、腰から前方に突き出している
- 膝が伸び切り気味で、足首や足裏が床に安定していない
- 長時間座っても背筋を立てるより、この姿勢のほうが「楽」に感じる
この座り方は、腹筋群の弱化や股関節周囲の筋バランスの崩れを助長し、さらにスウェイバック姿勢を固定化する原因となります。
スウェイバック姿勢が及ぼす影響
- 見た目の崩れ:お腹が前に突き出し、背中や首のラインも乱れる
- 競技パフォーマンス低下:ゴルフや野球の回旋動作、バレエやダンスのスピン精度が落ちる
- 腰痛リスク:腰椎に負担がかかり、脊柱管狭窄症や腰椎分離症などを招く恐れ
ショルダーブリッジとスウェイバックの関係
正しいショルダーブリッジは、肩峰・大転子・膝蓋骨が一直線に揃い、骨盤ニュートラルを保った状態で行います。
しかし、誤ったフォームでは骨盤が前方に変位し、スウェイバック姿勢を助長してしまいます。

正しいフォーム(改善効果あり)
- 大臀筋を使い、体幹を一直線に保つ
- 骨盤が前に出ず、姿勢改善につながる
誤ったフォーム(悪化リスクあり)
- 腰反りの代償動作で反動を使う
- 骨盤が前にスライドし、ぽっこりお腹姿勢を強調

上記の2つのショルダーブリッジを垂直にした場合、前者は立った時の正しい姿勢に近いのに比べて、後者は骨盤が前に押し出され、頭が前に出て、腰も反っています。
マシンピラティスとマットピラティスの選び方
リフォーマーでのショルダーブリッジは便利ですが、正しいフォーム理解なしでは逆効果になる場合があります。
初心者や姿勢改善目的の場合は、マットピラティスで基礎を習得してからマシンに移行する方が安全です。
また、ピラティスチェアーでのショルダーブリッジも有効なアプローチです。

まとめ|正しい動きの習得が姿勢改善の鍵
スウェイバック姿勢は、ケンダルの姿勢分類でも代表的な不良姿勢であり、外腹斜筋が長く、内腹斜筋が短いという筋長測定の結果も示されています。
改善には、立位・座位の姿勢癖の見直しとともに、正しいショルダーブリッジフォームで骨盤ニュートラルを身につけることが重要です。
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この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
NCPT(米国国家認定ピラティス指導者)
東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。
参考文献
- Kendall, F. P., McCreary, E. K., Provance, P. G., Rodgers, M. M., & Romani, W. A.
Muscles: Testing and Function with Posture and Pain (5th ed.). Baltimore: Lippincott Williams & Wilkins, 2005.
— 第5版にてスウェイバック姿勢における主要筋群の筋長と短縮の特徴(外腹斜筋の過伸張・内腹斜筋の短縮)を記載。 - Kendall, F. P., McCreary, E. K., & Provance, P. G.
『ケンダル 筋機能と姿勢』第5版(監訳:齋藤昭彦ほか)医歯薬出版、2006年。
— 日本語版でも同様のスウェイバック姿勢における筋長の評価が図とともに解説されている。 - National Pilates Certification Program (NPCP)
NPCP Candidate Handbook and Study Guide, 2023 Edition.
— ケンダルの姿勢分類を引用し、ピラティス指導における不良姿勢例としてスウェイバックを掲載。