【徹底ガイド】肩甲骨に付着する17種類の筋肉をやさしく解説

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—姿勢・肩こり・パフォーマンスを変える“肩甲骨17(ジュウナナ)”の秘密—

この記事でわかること

  • そもそも「17筋」とは?肩甲骨のヒミツをやさしくおさらい
  • 17筋をサクッと覚える早見表&具体例つき4機能グループ
  • ピラティスで整える3ステップエクササイズ
  • よくある質問(FAQ)でモヤモヤ解消

1. そもそも「17筋」とは?

空港のターミナルが17本の滑走路で飛行機を誘導するように、肩甲骨も17本の筋肉がびっしり付いて、腕や背中、首へ「動き」と「安定」を運んでいます。

肩甲骨には、空港の滑走路のように筋肉が付着している
  • 具体例:「腕を後ろに引く」とき。背中でハンドルを引っ張るように働く大円筋や広背筋が連動しないと、肩にぐっと負担がかかってしまいます。17筋がしっかり連携することで、スムーズに「引く」動作ができるんですね。

このパワフルな“筋肉のハブ”があるからこそ、私たちは肩を大きく回したり、重い荷物を持ち上げたりできるわけです。


2. 17筋をサクッと覚える早見表

覚え方ヒント

  • 回旋4兄弟:棘上・棘下・小円・肩甲下 → 腕の「ねじり」を守る
  • 寄せる双子:小菱形・大菱形 → 背中で「ハの字」をつくる
  • 押さえ役:前鋸筋+僧帽下部 → 翼状肩甲※を防ぎ、呼吸もサポート

3. 4つの機能グループで理解する

肩甲骨まわりの17筋を、役割ごとにざっくり4つのチームに分けると理解が深まります。

3‑1 “安定“チーム(ローテーターカフ+烏口腕筋)

主な仕事:肩関節の“ボール”をソケットにグッと押さえ込む
具体例:重い荷物を持ち上げたとき、腕だけに頼らず肩甲骨で支える感覚

3‑2 “胸郭“チーム(前鋸筋・小胸筋・肩甲舌骨筋)

主な仕事:肋骨まわりを安定させ、呼吸&姿勢をサポート
具体例:深呼吸で胸がしっかり開くと、肩甲骨がスムーズに外転

3‑3 “コントロール“チーム(僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋)

主な仕事:「寄せる・挙げる・下げる」を微調整
具体例:ノートパソコンを目の前にずらすとき、肩甲骨が滑らかに動くと首がラク

3‑4 “推進“チーム(広背筋・大円筋・三角筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋)

主な仕事:大きな腕の動きをパワフルに後押し
具体例:懸垂やバレーボールのスマッシュでグッと引き込む力

いわゆる筋トレは、“コントロール“チーム・“推進“チームにある大きい筋肉を強化したり、筋肥大させることが目的ですが、ピラティスは“安定“チーム・“胸郭“チームとのバランスを良くすることに大きく貢献できます。


自宅でも可能な、ピラティスで整える「神3エクササイズ」

それでは、この17個の肩甲骨がスムーズに動く「神3エクササイズをご紹介します」。

手順は以下の通りですが、ぜひリンク先のリール動画もご参照ください。

1. リブケージアームズ (Rib‑cage Arms) — 上体は垂直

  1. 椅子に浅く腰掛けて背すじを伸ばし、ハンガーを持って、大きく前へ倣えをする。
  2. 準備できたら、ゆっくりと両腕を上げていく。
  3. 腰が反らず、体幹が安定できるギリギリのところまで上げたら、呼吸を整えながら腕を下ろす。
  4. この動きを繰り返す。

2. ロングバックストレッチ (Long‑back Stretch) — 上体を前傾させて実施

  1. 先ほどと同じ座り姿勢から、体幹のまっすぐはキープしたまま、ハンガーを後ろに持ち肘を伸ばす。上体はやや前に傾ける
  2. 肩の高さをキープしたまま、背中を滑らせように肘を曲げる。
  3. 肩と肘の高さをキープしたまま、肘にを伸ばしていく。
  4. 肘を伸ばしたまま、もとのスタートポジションに戻る。
  5. この動きを繰り返す。

3. シェイブ・ザ・ヘッド (Shave the Head) — 上体を前傾させて実施

  1. 先ほどと同じ座り姿勢から、体幹のまっすぐはキープしたまま、ハンガーを頭の後ろへセット。肘はやや開く。
  2. スタートポジションが取れたら、ハンガーを頭上へ押し上げ肘を伸ばす(体幹の前傾は維持)。
  3. 肘は伸ばし切らなくても良いので上げられるところまであげ、その後、肘を曲げて元の位置に戻す
  4. この動きを繰り返す。

これらを1セット5回ずつを3セット行ってみてください。徐々に腕が上がりやすくなりますが、これは肩甲骨周りの筋肉のバランスが良くなった結果です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 「18筋」という説も見かけるのはなぜ?
解剖学の教科書によっては、広頸筋などを数えると18種類以上になるケースがあります。ただし、ほとんどの専門書では「17筋」を標準として紹介しています。

Q2. 肩甲骨を“寄せる”運動って毎日やっていい?
「寄せるだけ」だと菱形筋ばかり使ってバランスを崩すことも。前鋸筋で外転・上方回旋の動きをつくってから寄せると、安全かつ効果的です。

Q3. 自分でできるセルフチェック方法は?
壁に背中をつけ、ゆっくり両手を上げてみて。

  • 肘が耳の後ろまで来ればOK
  • 来なければ前鋸筋が眠っているサイン。前述した神3エクササイズで対応しましょう。

以上のステップ&ポイントで、「肩甲骨17筋」を親しみやすく理解し、毎日のピラティスに役立ててくださいね!

関連記事

【マジックサークル】「シェイブザヘッド」のポイント解説
※シェイブ・ザ・ヘッドの解説記事となっております

参考文献:書籍(日本語版含む)

  1. Standring S. (Ed.). Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice (42nd ed.). Elsevier, 2021.
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  3. Netter F.H. Atlas of Human Anatomy (8th ed.). Elsevier, 2022.
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オンライン論文・専門サイト(2025年7月28日確認)

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  2. Kenhub. “Scapula: Anatomy and clinical notes.” Kenhub.com. (accessed 29 Jul 2025). Kenhub
  3. Verywell Health. “The Anatomy of the Scapula.” 2019. (accessed 29 Jul 2025). Verywell Health
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  9. Physiopedia. “Dynamic Stabilisers of the Shoulder Complex.” (accessed 29 Jul 2025). Physiopedia
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この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。