ジョセフ・ピラティスと右目について

#ピラティスの歴史
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以前、ピラティスの歴史を学んだ際に、「ジョセフ・ピラティスは義眼だった」と伝えられていました。

その際、「幼少期のいじめっ子のせいで片目を失った」「ボクシングの事故で失明した」という説から、「スタジオのバネが目に当たって失明した」という説までありました。

しかし、最近では、ジョセフは義眼ではなく右目に斜視を患っていたという説が有力なようです。

ジョセフの兄弟であるフレッド・ピラティスは、インタビューの中で「右目は視力低下していたが、目自体の損傷ではない」とインタビュー記事で述べています。

斜視とは、片方の目の位置がもう片方の目に対してずれている状態です。

ジョセフの1942年の徴兵登録カードには「右目にギプス」を装着していたと記載されていました。

斜視は眼球または眼窩の外傷によって引き起こされる場合があり、局所的な急性軟部組織腫脹の結果である場合もあれば、眼窩骨折に続発する場合もあります。

そのため、もしかしたら以前の説にあったように、「いじめが原因」「ボクシングが原因」のように、外傷がジョセフ・ピラティスの目の問題を引き起こした可能性は残ります。

義眼でなかったのであれば、ジョセフに右目にはまだいくらか視力があった可能性があります

しかし、同時に、彼にはいわゆる「奥行知覚」がなかった可能性が極めて高いです。

奥行知覚
空間の奥行き、つまり三次元的な広がりを認識する能力のこと

ヒトは、通常、左右の眼で捉えた像のわずかなずれを脳が処理し、奥行きを認識します。

しかし、斜視を放置すると、時間が経つにつれて、脳は弱い方の目から受け取った画像を無視するようになり、三次元的に脳内で処理する能力が欠如していきます。

現在は、斜視の手術の成功率はかなり高いですが、ジョセフの幼少期、青年期の時代は、まだ手術が一般的ではなかったのかもしれません。

ジョセフ・ピラティスは、上記のようなハンデを背負ってはいましたが、さまざまな観察眼を持ち、独自のメソッドや器具を開発していきました。

このような身体的特徴まで研究されているのは、もちろんジョセフ・ピラティス自身が右目の障害を隠さずにクライアントに接していたこともあります。

また、ジョセフ・ピラティスがそのような障害をものともせず、日々の仕事に打ち込んでいたことに対して「尊敬の念」を抱いているお弟子さんたちが多かったこと証でもあります。

最後に。

ピラティス界では、世界に・日本に、多くの身体にハンデを抱えたインストラクターが活躍をしています。

「乳がんの切除手術により片腕が上げにくいピラティスインストラクター」が分かりやすい例かと思います。

また「もともとはレッスンを受ける立場だったのが、ハマっていってインストラクターになった」という方は、精神的に病んでいた方も含めて多くいらっしゃると思います。

私は、一見正常に見える人間であっても、誰しもがグレーな部分を持っている

と思っております。

「完全に正常な人間」

なんているはずがなく、どこかに欠陥を持っているはずです。

見た目的に分かりやすい欠陥もあれば、わかりにくい欠陥もあります。

「完璧な人間」なんて存在するはずがありません。

ハンデを抱えていても、ものすごく優秀なインストラクターはこの世にたくさんいます。

「そもそもジョセフ・ピラティスがそのような存在だった」ということを、とあるピラティス団体のいざこざを聞いて、このような記事の筆を取りたくなった次第です。

ピラティススタジオBB


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