「お尻のストレッチをしても、腰や脚の違和感がすっきりしない」
「坐骨神経痛かもしれないと不安を感じている」
そんなときに注目したいのが、お尻の深層にある筋肉「梨状筋(りじょうきん)」を含む股関節のインナーマッスルです。
本記事では、東京大学大学院で身体科学を専攻したピラティス指導者の視点から、一般的に「梨状筋ストレッチ」と呼ばれる4の字ストレッチの正しいやり方と、安全に強度を調整するコツを解説します。
目次
梨状筋とは?硬くなると何が起こる?
梨状筋は、お尻の奥深くにある小さな筋肉で、股関節の安定や外にひねる動き(外旋)に関わっています。
この筋肉の近くを坐骨神経が通っているため、過度な緊張が生じた場合に、周囲の違和感や神経症状と関連することがあります。

臨床的には「梨状筋症候群」と呼ばれることもあり、坐骨神経痛の一因とされる場合もありますが、腰や脚のしびれの原因はさまざまであり、必ずしも梨状筋だけが原因とは限りません。
⚠ 注意
強いしびれや鋭い痛みがある場合は、自己判断でストレッチを続けず、医療機関へご相談ください。
現代人が「お尻の奥」を緊張させやすい理由
① 長時間の座位
デスクワークなどで骨盤が後傾すると、お尻の深層筋が圧迫されやすくなります。

② 片足重心のクセ
無意識の左右差は、股関節周囲の筋バランスを崩します。

③ 姿勢の崩れ
猫背や反り腰では、股関節まわりに代償的な緊張が生じやすくなります。
実際には「梨状筋だけが硬くなる」というよりも、股関節の深層外旋筋群全体のバランスが乱れることが多いのです。
【実践】4の字ストレッチの正しいやり方
一般的に「梨状筋ストレッチ」と呼ばれる代表的な方法です。
基本ステップ
- 仰向けに寝て両膝を立てる
- 右足首を左太ももの上にのせ、数字の「4」の形を作る
- 左太ももの裏を両手で抱え、胸に向かってゆっくり引き寄せる
- 右お尻の奥に心地よい伸びを感じたら15〜30秒キープ
※痛みではなく「心地よい伸び感」を目安にしてください。

足首の角度で強度を調整する
足関節のコントロール(運動連鎖)を使うことで、体感的な伸び感を調整できます。
底屈(リラックス)
足首を自然に伸ばすと、全体のテンションが穏やかになります。初心者向け。

背屈(やや強め)
足首を90度に立てると、下肢後面の筋膜ラインに張力が生まれ、伸び感がやや強くなります。
※伸び方には個人差があります。

右足を背屈した状態での4の字ストレッチ
応用:ツイストで立体的に整える
4の字の形を保ったまま、脚をゆっくり左右に倒します。
体幹を安定させながら行うことで、梨状筋だけでなく中殿筋後部や大殿筋深層など、股関節まわり全体にアプローチできます。

専門家からのワンポイント
股関節を深く曲げた状態(約90度以上)では、梨状筋の作用方向が変化することが知られています。
そのため、単純に「外旋ストレッチ」と考えるのではなく、膝の位置をわずかに調整しながら最も伸びを感じるポイントを探すことが重要です。
回数とタイミング
- 時間:左右15〜30秒
- セット数:1〜3セット
- 呼吸:息を吐きながらじわっと深める
- タイミング:入浴後や就寝前など身体が温まっているとき
毎日2〜3分でも十分効果的です。
まずは動画で全体像を確認し、その後この記事で細かなポイントを読み直してみてください。
まとめ|身体は一生のパートナー
4の字ストレッチは、お尻の奥の深層筋を整えるシンプルで続けやすい方法です。
✔ 股関節の可動域向上
✔ 姿勢の安定
✔ 腰やお尻の違和感予防
につながります。
ただし、症状の原因は人それぞれです。
「ストレッチだけでは改善しない」「自分の骨盤の状態を正確に知りたい」という場合は、解剖学に基づいたパーソナル指導で身体のクセを分析することをおすすめします。
編集後記(2026年1月追記)
本記事につきまして多くの方にお読みいただき、まことにありがとうございます。なお、上記の内容は「今までの一般的に広まっている内容」を元にした記事でしたが、より厳密に解剖学を紐解くと、上記の内容は半分正しく、半分間違っていると言える内容と言えます。
執筆者の田沢が2025年秋に名古屋での外部セミナーでお伝えした内容の一部を記事化しましたので、ご興味ある方は、ぜひ下記の内容の記事をお読みください。
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「4の字ストレッチ」や「ピジョンストレッチ」で伸びているのは本当に梨状筋?
この記事の執筆者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
NPCT(米国国家認定ピラティス指導者)東京大学大学院・身体科学研究室修了。
身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文光堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。
参考文献
- Standring S. Gray’s Anatomy. Elsevier; 2020.
- Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System. Elsevier; 2017.
- Hopayian K, et al. Eur Spine J. 2010.
- Shacklock M. Clinical Neurodynamics. 2005.