はじめに
私たちは無意識のうちに、1日に約2万回も呼吸をしています。
1日は86,400秒。そのうちの約1/4を「呼吸の動き」に使っている計算になります。

もしその呼吸の質がほんの1%でも良くなったら——。姿勢や疲れやすさ、心の落ち着きまで、毎日の生活が少しずつ変わるかもしれません。
ピラティスでは「呼吸」を単なる酸素の出し入れとしてではなく、身体を整えるための大切な動きとして扱います。かつては「胸式呼吸(ラテラル呼吸)」が基本とされてきましたが、最新の国際基準(NPCP)では、より自然で全身を使う3D呼吸(3次元呼吸)が推奨されています。
人は1日にどれくらい呼吸しているのか?
- 1分間に12〜20回(4秒から5秒に1回)
- 1時間に720〜1200回
- 1日で17,000〜28,000回
つまり、1日に約2万回前後の呼吸をしていることになります。
これは1日の秒数(86,400秒)のおよそ1/4を呼吸に費やしていることと同じです。

これだけ多いからこそ、呼吸の「質」を整えることが健康に直結するのです。
呼吸の不思議な違い
実は動物によって呼吸の仕組みは異なります。
例えば**イルカやクジラは「意識的呼吸」で、水面に浮上して自分の意思で息を吸わなければなりません。

一方で人間は基本的に「無意識の呼吸」**で、寝ていても自然に呼吸が続きます。
しかしピラティスでは、この「無意識の呼吸」をあえて意識的にコントロールすることで、姿勢や心の安定を整えていきます。
ピラティスで使われる呼吸法
胸式呼吸(ラテラル呼吸)
- 息を吸うときに胸を横に広げる呼吸法
- お腹を膨らませずに体幹を安定させやすい
- 日本では長くピラティスの基本とされてきました
- しかし国際的には、「胸式呼吸だけを基本とする考え方は古い」とされており、現在は3D呼吸が主流になっています
3D呼吸(3次元呼吸)
- 胸を前後・左右・上下に広げる呼吸法
- 背中やわき腹まで膨らむようなイメージ
- 国際ピラティス資格(NPCP)でも重視されている

👉 詳しくはこちらの記事で解説しています(インストラクター向けの専門記事) →
ピラティス=胸式呼吸はもう古い?|呼吸法について改めて考える
呼吸が身体に与える影響
姿勢との関係
- 浅い呼吸 → 肩がすくみ、巻き肩になりやすい
- 深い呼吸 → 胸や背中が広がり、自然と姿勢が整う
自律神経との関係
- 長く吐く呼吸 → 副交感神経が働きリラックス
- 浅く速い呼吸 → 緊張状態が続き、交感神経が優位に

今日からできる呼吸リセット習慣
- 朝起きたとき
仰向けで胸やわき腹に手を置き、吸う息で胸が前後左右に広がるのを感じましょう。 - 仕事の合間に
背筋を伸ばし、吐きながら肩の力を抜きます。数回繰り返すだけで集中力が戻ります。 - 寝る前に
ろうそくを吹き消すように細く長く吐きます。副交感神経が働き、眠りにつきやすくなります。
お腹引き締め用のための解説動画ですが、下記も参考にされてください。
まとめ
- 人は1日に約2万回呼吸している
- これは1日の秒数(86,400秒)のおよそ1/4を占める大切な動き
- イルカは「意識的呼吸」、人間は「無意識呼吸」と異なる仕組みを持つ
- ピラティスでは、この無意識の呼吸をあえて意識的にコントロールすることで、姿勢や心身を整えることができる
- 胸式呼吸は従来の基本とされていたが、国際基準ではすでに3D呼吸が推奨されている
👉 1日2万回の呼吸が、たった1%でも変われば——あなたの毎日がもっと軽く、もっと楽しく、生まれ変わるかもしれません。
この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
NPCT(米国国家認定ピラティス指導者)東京大学大学院・身体科学研究室修了。
身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。