1. マシンピラティスの概要
「マシンピラティス」とは、ピラティス専用のマシンを使って行うエクササイズの総称です。
ピラティスには大きく分けて「マットピラティス」と「マシンピラティス」があります。マットピラティスが自重を使って行う運動であるのに対し、マシンピラティスはスプリング(バネ)やプーリー、バー、ロープなどを組み合わせた専用機器を使うのが特徴です。
ジョセフ・ピラティス氏が第一次世界大戦中に負傷兵のリハビリのためにベッドにバネを取り付けたのが原点といわれており、当初から「リハビリ」「サポート」「安全性」を重視して開発されました。現在では、リハビリやフィットネス、アスリートのパフォーマンスアップ、美容目的に至るまで幅広く活用されています。
マシンピラティスの大きなメリットは、**「正しい動きをサポートしながら効率よく筋肉を鍛えられる」**こと。
初心者には補助として働き、上級者には負荷として作用するため、幅広い層に対応できるのが魅力です。
2. ピラティスマシン比較表
代表的なピラティスマシンは以下の通りです。ここでは、マットピラティスも含め、特徴や用途を比較表にまとめます。
マシン名 | 特徴 | 主な効果 | 難易度 | 使用シーン |
---|---|---|---|---|
マット | 床にマットを敷いて自重で行う最も基本的なスタイル。 | 体幹強化、柔軟性向上、姿勢改善 | ★★〜★★★ | 初心者から経験者まで、場所を選ばず実践可能 |
リフォーマー | 最も代表的。ベッド状の台にキャリッジ(可動部分)とスプリングを装着。 | 全身強化、姿勢改善、可動域拡大 | ★★〜★★★★ | 初心者から上級者、リハビリからアスリートまで |
トラピーズテーブル | ベッド型フレームにバーやスプリングを装着。動きのバリエーションが豊富。 | 背骨の可動性、体幹安定、リハビリ | ★★〜★★★★★ | 医療現場やパフォーマンス向上トレーニング |
チェア | 小型で椅子状。スプリング負荷で上下動。 | 下半身強化、バランス能力向上 | ★★★〜★★★★★ | スポーツ選手や上級者向けに人気 |
ラダーバレル | はしご+半円樽型。ストレッチと体幹強化に特化。 | 背骨・胸郭の柔軟性、腹筋強化 | ★★★ | 柔軟性トレーニング、姿勢改善 |
スパインコレクター | 半円形の補助具。小型。 | 背骨の整列、ストレッチ | ★ | 初心者やシニアに人気 |
コアアライン | バランスドボディ社製。床上にスライドボード+チューブ。 | 姿勢保持、歩行改善、スポーツ動作強化 | ★★〜★★★★ | リハビリ、アスリート向け |
3. それぞれのマシンの解説
それぞれのマシンを解説する前に、まずは大枠を解説すると、マットピラティスができる範囲をリフォーマーは完全にカバーします。
その上で、トラピーズテーブルは、さらに初心者向け🔰やアスリート向け🏃♂️のエクササイズの提供が可能となります。

3-1. リフォーマー
リフォーマーは最も代表的なマシンで、マシンピラティスといえばリフォーマーを指すことが多いほど。

ベッド状のフレームに「キャリッジ」と呼ばれる可動式の台があり、スプリングの抵抗を調整しながら動かします。
特徴は以下の通りです。
- 初心者でも正しいフォームを維持しやすい
- 抵抗を調整して無理のないトレーニングが可能
- 全身のエクササイズに対応できる万能型
姿勢改善やボディメイクに特に効果的で、グループレッスンでもよく使われます。
なお、クリニカルリフォーマーやバランスドボディ社製のアレグロ2などは、フットバーの位置を動かせるなど多機能であり、より「パーソナルピラティスに強い」という特徴があります。

下記にて、2万回以上再生されている初心者向けのリフォーマーエクササイズをご紹介します。
3-2. トラピーズテーブル(キャデラック)
トラピーズテーブルは「ピラティスマシンの王様」とも呼ばれるほど多機能。
ベッドの四隅にフレームが立ち上がっており、そこにスプリング・バー・トラピーズを装着して様々な運動が可能です。

- 脊柱の柔軟性を引き出す
- 逆さまになる動き(インバージョン)もできる
- リハビリからアクロバティックな動きまで幅広く対応
初心者の補助として活用できる一方で、アスリートレベルの上級エクササイズが可能です。もしご興味があれば、1万回以上再生されている中上級者向けのYouTube動画をご確認ください。
3-3. チェア
一見ただの椅子のように見える小型マシン。
踏み台をスプリングで上下させる構造で、シンプルながら全身を強化できます。

- 下半身強化(特に太もも・臀部)
- バランス能力の向上
- コンパクトなので家庭用にも人気
強度が高いため初心者にはやや難しいですが、スポーツ選手や上級者には非常に効果的です。
下記にて、チェアを活用したエクササイズの動画をご紹介します。
3-4. ラダーバレル
はしごと樽型のアーチを組み合わせたユニークな形状。
主に背骨のストレッチや体幹強化に使われます。

- 背骨の柔軟性アップ
- 胸郭を広げ呼吸を深める
- 腹筋・側腹筋の強化に有効
特に猫背改善や胸を開くエクササイズに効果があります。
下記にて、2025年夏に撮影したラダーバレルのエクササイズ例をご紹介します。
3-5. スパインコレクター
小型で持ち運びやすいマシン。リフォーマーやキャデラックに比べるとシンプルですが、背骨や骨盤の整列に役立ちます。
- シニアや初心者でも扱いやすい
- ストレッチや補助運動に最適
- 自宅でも導入しやすい
下記の動画のように、スパインコレクターとトラピーズテーブルのようなピラティスマシンを同時に活用したエクササイズも可能です。
3-6. コアアライン
比較的新しいマシンで、イスラエルの理学療法士のジョナサン・ホフマンがBalanced Body社と共同で開発しました。
スライド式のボードとチューブを組み合わせ、日常動作やスポーツ動作に近いトレーニングが可能です。

- 歩行改善やリハビリに効果的
- アスリートの動作強化にも活用される
- バランス感覚と姿勢保持力を同時に養える
4. 主なピラティススタジオでの取り扱い例
日本国内でも、都市部を中心にマシンピラティススタジオが急増しています。
スタジオごとに導入しているマシンやレッスンスタイルは異なるため、選び方の参考になるようまとめます。
◎=豊富/○=一部あり/△=限定的/×=なし(スタジオや店舗により導入状況が異なる場合があります)
4-1. Club Pilates の特徴
Club Pilates はアメリカ発の大手ブランドで、日本国内でも全国に店舗を拡大しています。
全店舗でリフォーマーを導入していることが大きな特徴で、グループレッスンを中心に展開しています。
トラピーズテーブルやチェアは一部店舗で導入され、ラダーバレルは限定的に取り扱われています。
効率的に多人数へ指導できる仕組みを持ち、料金も比較的手頃なため、コストパフォーマンスを重視する人や初めてマシンピラティスに挑戦する人に向いています。
4-2. zen place pilates の特徴
zen place pilates は国内最大規模を誇るピラティス専門スタジオです。
リフォーマーに加えてトラピーズテーブル、チェア、ラダーバレル、さらにはコアアラインまで導入している店舗があり、マシンのラインナップが豊富なのが強みです。
少人数制のグループレッスンからマンツーマンのプライベートレッスンまで幅広く選べるため、初心者から上級者まで対応可能です。専門的に学びたい人や、長期的に継続して取り組みたい人に適したスタジオといえます。
4-3. ピラティスK の特徴
ピラティスK は女性専用スタジオとして人気を集めています。マシンはリフォーマーに特化しており、キャデラックやチェアといった他の大型マシンは導入していません。
定額制の料金システムや駅近の立地が多く、通いやすさを重視したスタイルです。美容やシェイプアップを目的にピラティスを始めたい女性にとって、気軽に取り組める環境が整っています。
4-4. the SILK の特徴
the SILK は内装デザインや空間づくりにこだわったスタジオで、美容志向やライフスタイルを重視する利用者に人気があります。
取り扱いマシンはリフォーマーが中心で、他の大型マシンは導入していません。少人数制レッスンや初心者でも通いやすいプログラムを用意しており、「まずは体験してみたい」という人に選ばれやすいスタジオです。
4-5. ピラティススタジオBB の特徴
ピラティススタジオBB は国内でも数少ない、全ての主要マシンを完備しているスタジオです。リフォーマー、トラピーズテーブル、チェア、ラダーバレル、コアアラインを揃え、完全プライベート制で一人ひとりに合わせた指導を行っています。
初心者のフォーム習得から、リハビリ、さらにはアスリートのパフォーマンス向上まで対応できる幅広さが強みです。質の高い指導と充実した設備を求める人に最適な環境といえるでしょう。
5. まとめ|マシンピラティスで効率的に身体を変える
マシンピラティスは、スプリングのサポートや負荷を利用して効率的に身体を整えることができるエクササイズです。
リフォーマーを中心に、キャデラック、チェア、ラダーバレルなど多彩なマシンがあり、それぞれ特徴や得意分野が異なります。
初心者にとっては「正しいフォームを学びやすい」安心感があり、上級者やアスリートにとっては「負荷を高めて鍛えられる」奥深さがあります。
もし「姿勢を良くしたい」「肩こりや腰痛を改善したい」「美しいボディラインをつくりたい」と思っているなら、まずはマシンピラティスを体験してみるのがおすすめです。
きっと、自分の体の新しい可能性に気づけるはずです。
この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
NPCT(米国国家認定ピラティス指導者)東京大学大学院・身体科学研究室修了。
身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。