なぜピラティス中に体が震えるの?──アスリートでも起こる“シェイキング”の正体とは

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「ピラティスをしていたら、体がプルプル震えてきた……」「自分の筋力が弱いのかな?」「間違ったフォームなのかも」と、不安になった経験はありませんか?

実はこの“震え”こそが、体が変わろうとしているサインかもしれません。

特に驚くべきは、プロのアスリートや筋力のある方でも、ピラティス中に激しく体が震えることがあるということ。これは単なる筋力不足ではなく、神経と筋肉の“調整機能”が試されている状態なのです。

今回は、ピラティス中に起こる「シェイキング(Shaking)」の原因と、その背後にあるメカニズムについて、一般の方にもわかりやすく、科学的に解説していきます。


シェイキングって何?いつ起きるの?

ピラティスでは次のようなときに「体の震え=シェイキング」が起こりやすくなります。

  • プランクやブリッジのように体をキープするエクササイズ
  • ゆっくりとした動きで深層筋を使うとき
  • バランスを必要とするエクササイズ(片足立ちなど)

これは「やり方が間違っている」から起こるのではありません。
むしろ正しく動けている証拠ともいえる現象です。


ピラティス中に震える4つの主な理由

① 深層筋(インナーマッスル)の疲労

ピラティスは、体の奥にある小さな筋肉(腹横筋・骨盤底筋・多裂筋など)をしっかり使います。これらは普段の生活では使われにくいため、短時間で疲れてしまい、震えの原因となります。

② 神経と筋肉の“連携不足”

筋肉は神経からの命令で動いています。慣れていない動きや、細かい動作では、脳と筋肉の連携がうまくいかず震えが起こります。これはまさに**“運動学習中”のサイン**なのです。

③ 筋肉内のモーター・ユニットの切り替え

筋肉は、複数の「モーター・ユニット(神経と筋繊維のセット)」で構成されています。負荷がかかると、それらが切り替わりながら動き続けますが、切り替えの際に一時的な不安定さが生じ、震えが発生します。

④ 精度の高い動きへの挑戦

ピラティスでは「正確なフォーム」「ゆっくり丁寧な動き」が重視されます。実はこれが、**最も高度な“筋コントロール”**を必要とするため、震えを引き起こしやすいのです。


なぜアスリートほど震えやすいのか?

ここがポイントです。

「体力や筋力がある人なら震えないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際にはその逆。高い運動能力を持つアスリートこそ、ピラティスで強く震えることがあるのです。

その理由は次の3つです:


🧠 1. 正しい動きを追求するからこそ“神経系”が働く

アスリートは動きの正確さを意識するため、表層筋ではなく、インナーマッスルの精密な動員に取り組みます。これは非常に難易度が高く、神経の制御負荷が一気に高まるため震えが出やすくなるのです。


🔄 2. 筋肉の出力は高いが“微細な制御”は未熟な場合も

競技スポーツは「爆発的な動き」「パワー重視」が多いため、小さく丁寧な動きには慣れていないアスリートも多くいます。
ピラティスでは「コントロール」が何より大切。だからこそ、鍛えられた身体でも新しい挑戦となり、震えが現れるのです。


⚖ 3. 無意識の筋活動を“意識的に行う”ため

ピラティスでは、「無意識に使っていた筋肉を、意識的に再教育する」ことを行います。アスリートであっても、この繊細な再学習には苦戦しやすく、神経系が試されることでシェイキングが出るのです。


震え=良いサイン?悪いサイン?

基本的には、シェイキングは良い反応と捉えてOKです。以下のような状態であれば安心して続けて大丈夫です。

  • 正しいフォームを保てている
  • 呼吸が止まっていない
  • 怪我や痛みを感じない

ただし、以下の場合は中断や修正が必要です

  • 急激な痛みがある
  • 呼吸が苦しい/止まってしまう
  • 関節に過度な負担がかかっている

プライベートのピラティスレッスンでは、通常「痛みが出るほど」のシェイキングを引き起こすことはありませんが、グループピラティスの場合は、自身で判断する必要があるため、シェイキングに限らず、痛みや呼吸が止まってしまう場合には、迷わず動きをとめた方が良いと思います。


シェイキングとうまく付き合う3つのコツ

コツ解説
フォームを最優先に震えが出ても、正しい姿勢が保てていれば問題なし
呼吸を意識する呼吸でリズムを整え、筋緊張を和らげる
レベルを調整する震えが強すぎるときは、エクササイズの強度を下げる(プライベートの時は、インストラクターの指示に従う)

まとめ:震えは“体の進化の兆し”

ピラティスで震えるのは、「体が弱いから」ではありません。

むしろ、深層の筋肉が活性化され、神経と筋肉が“本当の意味で”連携しはじめている証拠です。
とくに、アスリートのように筋力や可動性がある人でも、精密な動作に取り組むことで体が震えることは当然の現象です。

大切なのは、その震えを怖がらずに、「いま、自分の体が変化しているんだ」と前向きに捉えること。

震えは、あなたの成長の音。
ピラティスを通して、強く、しなやかに変わっていく体を楽しんでください。


📚 参考文献

  • Henneman, E.(1957)「モーターユニットの動員に関する研究」
    ─ 神経が小さい筋肉から順に動員される“サイズの原理”を説明
  • Schmidt, R.A. & Lee, T.D.(2011)『モーターコントロールと学習』
    ─ 動作学習初期に震えや誤差が生じやすいことを解説
  • Gallagher, S.P.(2000)『ジョセフ・ピラティス アーカイブコレクション』
    ─ ピラティスメソッドにおける神経と動作制御の関係を記録
  • Pilatay公式ブログ(2023)「なぜピラティス中に体が震えるのか?」
    ─ 神経系・筋疲労・モーター切り替えの観点から震えを説明
    https://www.pilatay.com
  • SELF Magazine(2022)「ピラティスで筋肉が震える理由」
    ─ 理学療法士がアスリートの震えについて解説
    https://www.self.com

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