【目次】
- 姿勢が悪いと本当にまずい?現代人の体に起こる変化
- 姿勢を支えるのは筋肉や関節の関係性だけじゃない?──体性感覚と内観力の重要性
- 視覚と姿勢の驚くべき関係とは
- ピラティスが提案する「感じて整える姿勢改善」
- 姿勢改善に役立つピラティスエクササイズ
- まとめ:自分を“感じる力”が美しい姿勢をつくる
1. 姿勢が悪いと本当にまずい?現代人の体に起こる変化
スマホ首、猫背、巻き肩、反り腰…私たちは日常生活の中で、無意識に不良姿勢に陥りやすい環境にいるいことは、皆様すでにご存知だと思います。

悪い姿勢は、例えば以下のような問題を心身に引き起こすことを、すでに経験上、またはさまざまなメディアでご存知なのではないでしょうか?
- 慢性的な肩こりや腰痛
- 呼吸の浅さ
- 内臓圧迫による消化不良
- 自律神経の乱れ
- メンタルへの影響(不安やうつ傾向)
2. 姿勢を支えるのは筋肉や関節の関係性だけじゃない?──体性感覚と内観力の重要性
姿勢の悪さについて、多くのトレーナーやインストラクターは「姿勢≒筋バランス」で説明しようとします。
もちろん、上記が原因の一つではあるのですが、筋肉や関節の関係性だけでが原因ではないことを、皆様ご存知でしょうか?
その中で、今回の記事では「体性感覚」と「内観力」にスポットを当てて解説したいと思います。
✔️ そもそも体性感覚とは?
体性感覚とは、自分の身体の位置・動き・重さを感じ取る感覚です。
たとえばお尻の筋肉(大臀筋)を収縮させたとき、「どの部分が、どのくらいの強さで力んでいるか」を感じ取れるのは、筋紡錘(きんぼうすい)や腱の受容器からの情報によるものです。これにより、意図した通りに動かしたり、力の入れ具合を調整したりすることができます。
体性感覚が鈍いと、力みすぎたり左右差に気づけなかったりしますが、この体性感覚の鋭さは、人によってかなりバラツキがあります。

✔️ 姿勢と内観力
この体性感覚を適切に“読める”能力が「内観力」です。内観力が高まると、次のような変化が起きます:
- 自分の歪みに気づけるようになる
- 動きのコントロールが正確になる
- 無意識に姿勢を修正できるようになる
つまり、筋肉の強さや柔軟性だけではなく、「今、どこがどう動いているか」を感じる力が正しい姿勢の鍵なのです。
3. 視覚と姿勢の驚くべき関係とは
私たちの脳は、姿勢を保つために視覚情報を強く利用しています。例えば、
- 視線が下がると背中が丸まりやすい
- 目が疲れてくると肩がすくむ
- 暗い場所だと無意識に防御的な姿勢(前屈姿勢)になる
このように、視覚の情報処理と姿勢制御は密接にリンクしています。
また、脳は視覚と体性感覚の両方を統合して「今、自分がどういう姿勢にいるか」を判断しているため、視覚情報がずれると、体性感覚にもズレが生じやすくなります。
明るい平地の場面では、大まかに「体性感覚が70%」「視覚が20%」「前庭覚が10%」、姿勢制御に関わっているとされています。
本記事では前庭覚の説明は省略しますが、この上記3つの感覚を正しく身体に入力することで、身体の状態を脳が理解し、筋肉の緊張状態も適切化します。
🧠 TIPS:姿勢は“見ること”と“感じること”の掛け算でできている!
4. ピラティスが提案する「感じて整える姿勢改善」
ピラティスは通常の筋肉トレーニングやストレッチの要素に加え「内観力を通じた動作の再教育」を目的としたメソッドということが可能です。
ピラティスでは、解剖学に基づいた正確な動きを重視します。1つ1つの関節や筋肉の働きを意識しながら丁寧に動作を行うことで、身体の構造に即した効率的な動きが可能になります。
また、呼吸と動きを連動させることで体幹の安定性を高め、より深い感覚への気づきを促します。
これらの実践を通じて、体性感覚・視覚・運動の三つのシステムが統合的に鍛えられ、姿勢や動作の質の向上へとつながっていきます。
ヨガにも同様に呼吸や内観に基づく感覚の向上が期待できますが、ピラティス、とくにマシンピラティスでは、スプリング(バネ)の張力や抵抗を利用しながら、仰向け・うつ伏せ・横向き・四つ這いなど多様な肢位でエクササイズを行います。
これにより、さまざまな角度や負荷の中で筋肉や関節、皮膚からの体性感覚が脳に入力され、より繊細で多角的な身体認知が育まれていきます。

こちらのサイトでも、多くの会員様の改善事例をご紹介していますが、身体や脳の中ではさまざまな変化が起きているのです。
5. 姿勢改善に役立つピラティスエクササイズ
以下、ピラティススタジオBBで取り組んでいるいくつかのエクササイズをご紹介します。
● アイノッド(eye nod)・アイリフト(eye lift)(視線と体性感覚の統合)
- 頭部を前屈する際に、先に視線を下げるのがアイノッド
- 頭部を後屈する際に、先に視線を上げるのがアイリフト
- 先に視線を動かすことで、上位頸椎の屈曲・伸展がスムーズになり、その感覚を味わうことができる
● ペルヴィック・クロック(骨盤の知覚を高める)
- 骨盤の前傾・後傾だけではなく、横や斜めに動かすことで、骨盤の使い方と感覚が統合される
- 「骨盤ニュートラル」の感覚習得に役立つ
● アーティキュレーティング・ショルダーブリッジ(背骨の分節的コントロール)
- 背骨を“1つずつ”動かす意識
- 動きの中で姿勢を保つ力を高める
- フォームローラーを活用することで、背骨が当たったり、離れたりする感覚がより分かりやすくなる
● 呼吸+フロー(ブリージング with ムーブメント)
- 呼吸に合わせて上肢や下肢を連動
- 動きの中で安定感と柔軟性を高める
6. まとめ:自分を“感じる力”が美しい姿勢をつくる
姿勢は、筋肉だけで語るには不十分です。
- 体性感覚(=体を感じる力)
- 視覚(=空間との関係性を捉える力)
- 内観力(=自分の内側への注意力)
これらを高めることで、自然と“良い姿勢”が日常に染み込みます。
ピラティスはその全てを網羅する、現代人にこそ必要な姿勢改善メソッドといえます。
ピラティススタジオBB
📚 参考・引用資料一覧
- Joseph Pilates & William J. Miller (1945). Return to Life Through Contrology
― ピラティスメソッドの原典。動作と呼吸、身体制御の基本原則を提唱。 - Kavounoudias et al. (1999). The role of somatosensory input in postural control. Experimental Brain Research
― 体性感覚と姿勢制御の関係を明らかにした研究。 - Horak, F. B. (2006). Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls? Age and Ageing
― 姿勢保持における視覚・前庭・体性感覚の統合について解説。 - Shumway-Cook & Woollacott (2007). Motor Control: Translating Research into Clinical Practice
― 内観力や感覚統合の重要性に関する臨床的・理論的知見。 - Centerworks Blog. “The Importance of Eye Focus and Pilates Exercise”
(https://blog.centerworks.com/what-are-you-looking-at-the-importance-of-eye-focus-and-pilates-exercise/)
― ピラティス中の視線の役割に関する解説記事。 - Pilates Anytime/Balanced Body 公式教材
― エクササイズ例(ショルダーブリッジ、ペルヴィック・クロック等)の動作指導に基づく内容。