ピラティスインストラクターを目指すうえで、「どの団体で学ぶか」は将来の活動範囲や信頼性に直結する重要な選択です。
2020年代に入り、国内外では多様な資格団体が登場し、以前に比べて「国内の独立系資格」からインストラクターを目指すケースも増えてきました。選択肢が広がる一方で、世界的な水準で見れば、本格的な教育を受けた優秀な指導者はまだ少数派です。
だからこそ、最初から「伝統的かつ実績ある団体で学びたい」「将来的に海外でも通用する資格が欲しい」というニーズも根強く存在しています。
この記事では、PHIピラティス・ジャパンの東京支部長、バランスドボディ社認定のコアアラインのマスタートレーナーを経験した著者が、10年以上にわたって毎年海外でピラティスを学び続けてきた経験をもとに、世界的に見て“受講者数が数千人以上”の主要ピラティス団体に限定し、それぞれの特徴や選び方のポイントを詳しく解説します。
✅ ピラティス団体選びにおける3つの視点
「世界基準」でピラティス団体を選ぶ場合には、以下の観点での比較がポイントとなります。
- 展開国数・卒業生数:資格の汎用性や国際的な評価
- 教育スタイル:クラシカルかモダンか、またはその融合
- 対象層:医療従事者向け、フィットネス向け、アスリート向けなど
🌍 世界的に見た主要ピラティス団体(数千人以上)
以下は、世界中で「数千人以上」の受講者・卒業生を持つ団体に限定した比較です。
1. Balanced Body(バランスドボディ)|世界最大級のシェア
- 拠点国:約60カ国以上
- 教育拠点:300以上
- 受講者数:全世界で5〜10万人超(推定)
- 教育スタイル:モジュール制
- 特徴:Reformerなどのマシン製造でも世界的トップ
- 適している人:世界中で通用する資格を柔軟に取得したい方
2. STOTT PILATES(ストットピラティス)|医療・リハビリ連携の代表格
- 拠点国:約50カ国以上
- 教育拠点:200以上
- 受講者数:約5万人以上(推定)
- 教育スタイル:一貫教育型
- 特徴:医療現場でも通用するピラティス理論
- 適している人:医療や機能改善にピラティスを活用したい方
👉STOTT PILATES(Merrithew)の英語ページ
3. BASI Pilates(バシピラティス)|芸術性と科学性の融合
- 拠点国:約40カ国以上
- 教育拠点:120以上
- 受講者数:約1〜2万人規模(推定)
- 教育スタイル:Foundation → Graduate → Master
- 特徴:美しい動きと構造的思考の両立
- 適している人:パフォーマンス向上、動作芸術に関心がある方
4. Peak Pilates(ピークピラティス)|クラシカルと現代の融合型
- 拠点国:約25カ国
- 教育拠点:50〜80
- 受講者数:約7,000〜1万人規模(推定)
- 教育スタイル:クラシカルベース、レベル制
- 特徴:木製マシンとの連携が魅力
- 適している人:伝統的な型を守りつつ柔軟性を求める方
5. Polestar Pilates(ポールスターピラティス)|臨床特化型のピラティス教育
- 拠点国:約30カ国
- 教育拠点:80程度
- 受講者数:約5,000〜7,000人規模(推定)
- 教育スタイル:神経科学・理学療法ベース
- 特徴:運動療法としてのピラティスに特化
- 適している人:医療現場・高齢者施設などで指導したい方
6. Romana’s Pilates(ロマーナズ・ピラティス)|クラシカルスタイルの正統継承者
- 拠点国:約20カ国
- 教育拠点:数十(非公開)
- 受講者数:約4,000〜6,000人規模(推 定)
- 教育スタイル:完全クラシカル
- 特徴:厳格な一貫教育と伝統主義
- 適している人:純粋なクラシカルを徹底的に学びたい方
7. PHI Pilates(ピーエイチアイ・ピラティス)|医療・福祉に強いアジア展開団体
- 拠点国:約10〜15カ国(日本中心)
- 教育拠点:20〜40
- 受講者数:約5,000〜7,000人規模(推定)
- 教育スタイル:医療系・高齢者対応モジュール制
- 特徴:理学療法士によるプログラム。整形外科でも導入
- 適している人:地域医療・介護施設で活かしたい方
8. Lolita’s Legacy(ロリータズ・レガシー)|指導者養成特化のクラシカル系団体
- 拠点国:約15〜20カ国
- 教育拠点:30〜50
- 受講者数:約3,000〜5,000人規模(推定)
- 教育スタイル:クラシカル+教育者養成重視
- 特徴:ジョセフ・ピラティスの公式認定弟子による正統継承
- 適している人:教えることを極めたい中上級者向け
📊 団体別 受講者数まとめ(簡易表)
団体名 | 推定受講者・卒業者数 |
---|---|
Balanced Body | 約5〜10万人以上 |
STOTT PILATES | 約5万人以上 |
BASI Pilates | 約1〜2万人 |
Peak Pilates | 約7,000〜10,000人 |
Polestar Pilates | 約5,000〜7,000人 |
Romana’s Pilates | 約4,000〜6,000人 |
PHI Pilates | 約5,000〜7,000人 |
Lolita’s Legacy | 約3,000〜5,000人 |
🧭 番外編:中立機関としての「NPCP」とは?
ここまでご紹介した団体はすべて「教育団体」ですが、それとは別にピラティス界には中立的な認定機関として重要な役割を果たしている存在があります。それが、**NPCP(National Pilates Certification Program)**です。
- 旧名称:PMA(Pilates Method Alliance)
- 現在:NCCA(米国国家認証機関)に認定された唯一のピラティス資格
- 資格名:NCPT(Nationally Certified Pilates Teacher)
- 特徴:特定の教育団体に依存せず、知識・実技・倫理を総合的に問う中立試験
✅ 世界中の団体で学んだインストラクターが、最終的にプロフェッショナルとしての実力を証明する場として受験するのがNPCP試験です。
🎓 真に信頼されるインストラクターとは?資格と学びのバランス
「数千人以上の卒業生を持つ世界的団体」で学ぶことは、ピラティス指導者としての信頼性を築くうえで確かな選択です。教育実績が豊富で、資格の認知度や国際的な信用力も高く、それだけでキャリアの幅は大きく広がります。
さらに、真に“世界基準”の証明を目指すのであれば、団体内の資格取得にとどまらず、NPCP(National Pilates Certification Program)のような中立的な認定機関の資格も視野に入れるとよいでしょう。これは、どの団体で学んだかに関係なく、自分の実力そのものを証明できる唯一の仕組みだからです。
とはいえ、ここで一つ付け加えておきたいのは、「どこで学ぶか以上に、どのように学び続けるか」が大切だということです。
私自身の考えとしては、インストラクター資格はあくまでも“スタート地点”に過ぎません。資格取得後も継続的に学び続ける意志があるならば、どの団体で資格を取っても問題ないとも思っています。
「誰に学ぶかが大切」とよく言われますが、私はそれ以上に**「誰が学ぶか」の方がずっと重要**だと感じています。つまり、どの団体・どの環境にいたとしても、自ら学び続ける人が最終的に信頼される指導者になるということです。
資格のブランドだけにとらわれるのではなく、学び続ける姿勢と実践力こそが、指導現場で真に必要とされる資質ではないでしょうか。
この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。
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