スタンディング・クロックタップスとは?
スタンディング・クロックタップス(Standing Clock Taps)は、片脚立ちの状態で反対側の足を時計の文字盤に見立ててタップしていく動作を繰り返すことで、体幹の安定性・股関節周囲の筋力・バランス能力を同時に鍛えるエクササイズです。
マットも不要で行えるため、自宅やオフィス、スタジオなど場所を選ばずにできる点が大きな魅力です。特に「バランス力」「姿勢改善」「転倒予防」「下半身引き締め」に効果的で、ピラティスやフィジカルリハビリの補助エクササイズとしても応用されています。
体幹にも美脚にも効くスタンディング・クロックタップス。
まずは、どんなエクササイズか?動画で確認してみましょう。
エクササイズの目的と効果
✅ 主な目的
スタンディング・クロックタップスには、さまざまな効果がありますが、簡潔に書くとしたら「片脚立ちのバランスが向上して、お尻にも効く」ことだと思います。
正しいフォームでエクササイズすると、最初は左右10回ずつ取り組むだけで翌日に筋肉痛が来ることもあります。
意外と負荷が強い一方で、関節にかかる負担は比較的に小さいエクササイズです。
以下、インストラクターの方向けに、もう少し専門的な用語で解説をします。
- 片脚で立った時の骨盤や体幹安定化
- 股関節の分離運動
- 足部・足関節の固有感覚と支持力の向上
- 抗回旋能力(anti-rotation)の強化
まずは、動いて確かめていただきたいのですが、いわゆる自重の「ランジ」よりも全身への効果が高いエクササイズと思っていただける方がおおいのではないでしょうか?
✅ 主に使われる筋肉群
こちらの解説も、どちらかというとインストラクター向けの記事にはなりますが、ぜひ参考にされてください。
私たちインストラクターは、一つのエクササイズで多くの筋肉の関与を想像しながら、エクササイズをチョイスしていますし、さまざまな筋肉が関与しているのです。
筋肉 | 主な働き |
---|---|
中殿筋 | 骨盤の水平保持、片脚立ちの安定 |
腸腰筋 | タッピング動作の脚の振り出し |
腹横筋 | 体幹のインナー安定性維持 |
足底筋群・前脛骨筋 | 立脚側の足部支持・バランス保持 |
多裂筋・内腹斜筋 | 骨盤・脊柱の回旋コントロール |
次に手順について解説をします。
スタンディング・クロックタップスの手順
▶ スタートポジション
- 両足でまっすぐ立つ。骨盤はニュートラル、背骨は自然なカーブを保つ。
- 腕を腰に当て、姿勢を安定させる。
▶ 動作の流れ(右足でタップする場合)
- 右足を前方(12時)に軽くする
- そのまま、1時、2時、3時(真横)、4時、5時、6時(真後ろ)と、時計の文字盤をなぞるように順に軽く床に触れる
- 3時を過ぎたくらいから、左足の膝が曲がっていき、7時、8時の位置まで足を後ろで交差させる(8時の時は、ボーリングを投げる時のようなフォームになる)
- 反対側の脚でも同様に行う
- 当初は1セット左右8〜10往復。徐々に回数を増やし、左右100往復を目指す。
体幹と骨盤がぶれないように意識することが最重要ポイントです。

正しいフォームのポイント
- 股関節主導で脚を動かす(骨盤ごと回らないように)
- 立脚側の足指で床をしっかり捉え、アーチを保つ(当初は意識しすぎなくて大丈夫)
- タップ時に軸足の膝が内側に入らないように注意(通常のランジよりは膝が内側に入りにくい)
- ゆっくり丁寧に動かし、動作に意図を持たせるが、慣れてきたらスピードをアップしたり、足が8時の位置に行ったときに床を触るなどの応用もお勧め
どんな人におすすめ?
- マットを使わずに体幹や下半身を鍛えたい人
- インナーマッスルを鍛えて姿勢改善や転倒予防をしたい中高年
- 運動をする上で片脚バランス力を高めたい人
- ランナーやダンサーで、骨盤の安定性・脚の分離運動の質を高めたい人
よくある質問(FAQ)
Q. 片脚立ちが不安定でバランスがとれません
A. はじめは壁や椅子を軽く支えにして行ってOKです。中殿筋や足部の筋肉の弱化が原因のことが多いので、回数より質を重視しましょう。
【まとめ】Standing Clock Tapsは「動的安定性×姿勢力」を鍛える万能エクササイズ
スタンディング・クロックタップスは、片脚立ちというシンプルな姿勢の中に、動的な安定性・コアの強化・股関節の協調運動といった要素を詰め込んだ全身エクササイズです。
マットや器具がいらず、正しいフォームを身につければ腰痛予防・スポーツ動作の安定性・美しい姿勢作りなど幅広い効果が期待できます。
最初は、動きの質を重視し、徐々に回数を増やしたり、スピードなどを上げたりすることで、この素晴らしいエクササイズを「自分のもの」としていきましょう!
まだまだ日本ではメジャーではないエクササイズですが、おそらく感度の高いトレーナーほど、このエクササイズを取り入れると思いますので、徐々に国内にこの「スタンディング・クロックタップス」が広まってくれると嬉しいです😊
ピラティススタジオBB
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この記事の監修者:田沢 優(ピラティススタジオBB 代表)
東京大学大学院・身体科学研究室修了。身体運動学・神経筋制御を専門とし、科学的根拠に基づいたピラティスメソッドを構築。2013年にピラティス国際資格である、PMA®認定インストラクター資格を日本で4番目に取得。2015年「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」受賞。PHIピラティスジャパン東京支部長を約5年間務め、都内を中心にパーソナルピラティススタジオを複数展開。オリンピック選手、プロ野球選手、Jリーガー、パラアスリート、頸髄損傷者などへの幅広い指導実績を持ち、インストラクター育成数は500名超。文英堂『運動療法としてのピラティスメソッド』にて3編を執筆。現在は「ピラティスをブームではなく文化にする」ため、後進育成と専門教育に尽力中。